月末に、サイトの閲覧数、予約ボタンのクリック数、来館者数を並べてみた。数字はそろったものの、「今月の広報はどうだったか」と聞かれると答えに迷う。そんなときは、集計する項目を増やす前に、それぞれが何を数えているかを確かめてみましょう。
この記事では、三つの指標を月報へまとめ、翌月の行動を決める手順を考えます。館の価値や活動の目的を整理する視点は広報の振り返りの記事、開館日数を含む比較は来館者数の比べ方も参考にしてください。
英国の指標ガイドは来館とWeb利用を分けている
英国DCMSが公開する2022/23年度の美術館・博物館の指標ガイドでは、1.1で実際に施設を訪れることを定義し、仮想的な訪問を除外しています。1.2にはWebサイトへの訪問を別の指標として置いています。また、ショップやカフェなどを別集計している場合、その数を来館総数へ足さない扱いも示されています。[1]
ここから参考にできるのは、数字を合計する前に「何を含め、何を含めないか」を決める姿勢です。英国の対象館向けの定義を、日本のすべての美術館にそのまま適用するという意味ではありません。このガイドのWeb利用の定義も、現在のGA4の仕様として読み替えないようにします。
以下は、この考え方を小さな広報チームの月報へ応用する独自の手順です。
月報の前に三つの指標の意味をそろえる
例えば、今月の目的が「展覧会に関心を持った人が、来館の条件を確認して予約へ進めるようにする」ことなら、案内ページの閲覧、予約先への移動、実際の予約を分けて見ます。来館まで把握できる場合も、予約件数やWebの数値と別の行に置きます。
最初は、判断に使う三つ程度の指標を選びましょう。各指標には、名前に加えて単位・対象期間・取得元を添えます。毎月同じ画面からコピーしていても、対象ページや除外条件が変われば同じ意味の比較にはなりません。
| 指標の例 | 数え方と取得元 | その数だけでは分からないこと |
|---|---|---|
| 展覧会案内の閲覧 | 対象ページのビュー。解析画面の名称と条件を残す | 読んだ実人数、理解した人数、来館者数 |
| 予約先への移動 | 対象ボタンのクリックが記録された回数。計測設定を確認する | 予約完了件数、予約した人数 |
| 予約の成立 | 予約システムで確認した件数。キャンセル等の扱いも記す | 実際の入館人数、Webだけが生んだ予約 |
Googleの指標一覧では、ビューは同じページやスクリーンの繰り返し表示を含み、イベント数はイベントが発生した回数とされています。[2] ボタンを押す操作をイベントとして記録していても、その数は予約完了を意味しません。どの操作を記録する設定なのかを、サイトの管理担当者と確認します。
予約システムに入れない、途中からしか計測していないといった場合は、取得できた範囲も書きます。未取得をゼロに置き換えず、いつ誰に確認するかを残します。確認した結果が0件だった場合は、0件と記録して構いません。
架空の記入例から分かることと分からないことを分ける
次の数値は説明用に作った架空の例です。実在館の実績でも、ミカタの実績でもありません。対象ページとクリックの定義は前月と当月で同じとし、来館数は館内の集計、開館日数は運営記録から得たものと仮定します。
| 指標 | 前月から当月への変化 | 月報での読み方 |
|---|---|---|
| 案内ページのビュー | 1,000回 → 1,200回 | 200回、20%増加。来館効果の証明ではない |
| 予約先へのクリック | 80回 → 84回 | 4回、5%増加。予約の成立は別に確認する |
| 予約完了件数 | 未取得 → 未取得 | 増減も予約率も判断を保留する |
| 来館数と開館日数 | 800回・20日 → 960回・24日 | 総数は20%増、開館日あたりは両月40回 |
この例では、ビューが増えた割合ほどクリックは増えていません。80÷1,000は8%、84÷1,200は7%ですが、これはクリック回数とビューの比であり、予約率ではありません。同じ人の複数回の閲覧やクリックも含み得るため、「ページを見た人の何%が予約したか」という説明には使えません。
来館の総数は増えていますが、開館日数も増えています。開館日あたりに直すと両月40回です。ただし、これだけで来館動向が同じだったとも、広報の効果がなかったとも判断できません。会期、曜日、学校休暇、催しなどの違いを合わせて確かめます。
数字と説明の距離を保つため、月報には「確認できた事実」「まだ分からないこと」「次に確かめること」を分けて書くと整理しやすくなります。例えば、次のような文章です。
案内ページのビューは20%増、予約先へのクリックは5%増だった。予約完了件数は未取得のため、予約への寄与は判断できない。来館総数は増えたが開館日数も増えている。次月は、予約データを取得できる範囲を確認し、スマートフォンで予約先までの案内に迷いがないか点検する。
この文章は架空の月報例です。数値が上がった理由を補うより、確認できる範囲と次の仕事を明確にすることを意識しています。
数字の横に現場の声と比較条件を残す
月報には、会期や開館日数、計測開始日などの条件と、受付や問い合わせで気付いたことを短く添えます。「予約が必要か尋ねる電話があった」なら、対象期間と記録の範囲を残します。件数を数えていなければ、増えた・減ったとは書かず、担当者が気付いた質問として扱います。
氏名や連絡先、問い合わせの全文を報告書へ集める必要はありません。案内を直すために必要な質問の内容を、個人が分からない形で整理します。一人の声が、来館者全体の意見を代表しているとも限りません。
解析の設定変更があった月は、その日と変更内容を添えます。増減が見えたら、ページや発信の変化に加えて、集計条件が変わっていないかも確認する。条件の違いが残るうちは、前年同月比や前月比に理由を断定する文章を付けないようにします。
次月に変える一つと確かめる日を決める
架空の例では、予約完了件数を取得できるかを確認する仕事が残っています。そのうえで、予約条件の案内を点検し、読者が判断しにくい箇所を一つ選んで直す、といった順番が考えられます。クリックの比が下がったことだけを理由に、広告費や投稿数を増やす必要はありません。
次の行動は「何を変えるか」「担当」「変更日」「いつ何で確認するか」を一組で残します。例えば「予約の要否をボタンの近くへ追記し、次月の同じ期間・同じ条件でクリックと問い合わせの内容を見返す」という形です。変更後の増減にも会期などの影響があるため、一度の比較で因果関係が分かったとはしません。
今月の月報から三つの指標を選び、単位・期間・取得元が分かるか確かめてみてください。未取得は未取得のまま残し、最初に確認する相手と日を決める。それだけでも、数字を並べた報告から、次の仕事を選べる記録へ進められます。



